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6・阿部の本音

「ですが・・・」

阿部は黒田らに真剣な顔で語りかけた。

「私はホントの事を知りたいと思いました。
 世間で言われている事は真実なのか・・・
 岡本先生は私に世界の真実を知りなさいと・・」

黒田ら三人が顔を見合わせた。

「岡本先生は私の考えは妄想思想だと言われました。
 現実の我が国の事実を知りなさいと・・
 藩の枠を乗り越えて行動しないとこの国は滅びると」

阿部は中庭にある雑草を見つめた。

「雑草はどこにでも根をはります。
 ですが私は久保田の田舎から江戸に来て
 いろんな事を学びましたが江戸に根をはる事を藩は許しません。
 されど本音で言えば藩のしがらみに縛られるのも嫌で故郷に根をはる事もできず、
 脱藩する勇気もなく中途半端のままこの江戸に居ました」

阿部は雑草をむしり中庭に放り投げた。

「どうせ根をはる事ができぬのなら猛勉強をして故郷に錦を飾ろうと
 一小家塾で岡本先生から学んでおりました。
 私は先生の教えを学んでるうちに外国に興味を持ちはじめ、
 もっと世界の事情を知りたいと・・・」

「それも攘夷のために世界事情を知りたいがためですか?」

大鳥は石に腰をかけ雑草を見つめながら阿部に聞いた。

「いえ、言葉では攘夷と叫んでおりますが・・・
 分からなくなってきたのです。国のためには何が正しいのか」

阿部の向かいにいた黒田も雑草をむしり手にとりながら

「英国と戦ってえわしらは悟ったでごわす。彼らには勝てぬと。
 残念ながら互角の戦などではなっかたでごわす。」

「やはりですか・・」

阿部は暗い顔になり下にうつむいた。

「ならば阿部君。外国に勝つためにはどうすべきか。
 そして世界の真実の事情をもっと知りたいのなら
 ここで学ぶのが一番ですよ」

黒田は笑みの表情で阿部を見つめた。
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テーマ : 短編小説
ジャンル : 小説・文学

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