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5・黒田の経験

大鳥は鬼のような形相で阿部を見た。

「阿部君は外国人を刀で切ろうと考えているのかね」

阿部はムキになる口調で

「当然です。異国人はこの日の本の国を乗っ取ろうと
 しているのですから。きゃつらを打ち払うのに何の問題
 があると言うのですか!」

「確かに外国人がこの国を狙っているのは事実ですよ。
 ですが、今の我が国の技術では到底かなわないのも事実です」

大鳥は阿部に静かに語りだした。

「阿部君は、さきの薩摩のイギリスとの戦をもちろん
 御存じですよね。
 この戦では両藩とも負け戦みたいなものでした。
 なぜだとおもいます?」

阿部は口をとがらせながら

「それは戦術もさることですが、武士としての気合いも、」

「ああ、もういいです、阿部君。」

大鳥は途中で呆れた顔をしながら阿部の話を遮った

「なにがですか!拙者の話を最後まで、」

阿部はまたムキになった。

「阿部君、いいですか。
 薩摩の敗因の原因は技術と産業の差です。
 米英仏欧は我々よりも高度な大砲と鉄砲を持っています。
 無論、貴方の言う戦術も到底かないません。
 刀や槍では西洋人には勝てないのです。」

大鳥は阿部の目を見つめながら語った。

「そこにいる黒田君や大山君はそれを経験しました。
 だからここで学んでいるのです」

阿部は黒田と大山の方を見た。

 黒田と大山はこくりと、うなずいた。

「阿部殿、世間では攘夷、攘夷と騒いでますが
 敵の事を分からずに倒そうとするのは無謀です。
 私達は英艦隊との戦で実感しました。
 むしろ彼らの技術を吸収して我々がこれを追い越さねば
 この国は滅びます」

黒田もまた攘夷の無謀さを阿部に語りだした。

「貴方の言う外国の乗っ取りは本当です。
 ですが我々がそれに同等の兵力を持てば向こうも
 考えを変えます。そのためにここで皆この塾で学んでおるのです」

阿部はなにやら困惑してる表情になってきた。

「ですが私が藩から聞いた話では薩摩藩は
 かなりの深手を負いながらも互角の戦いをしたと聞きました。
 それに長州の攘夷も勝利におわったと。 ただ・・・」

「ただ、どげんしました?」

黒田は阿部に不思議そうな顔で聞いた。

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