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2・久保田藩士・阿部辰太郎の訪問

「はい、どちらさまでしょうか」

 黒田が玄関に向かう青年が立っていた。

「拙者、久保田藩士・阿部辰太郎と申します」

「はあ、出羽の方でござるか?」

 不思議な顔で黒田は青年を見つめた。

「はい、拙者、江戸就学で岡本周吉先生から学んで
 おりましたが西洋砲術もどうしても学びたくて」

 阿部の手には手紙が握られていた。

「西洋砲術をどうしても学びたいなら江川塾が
 良いと岡本先生から紹介されまして」

 阿部は黒田の手に手紙を差出した。

「是非、この紹介状を江川先生にお渡しできますか」

 黒田は阿部の眼を見つめ

「分かり申した。ですが、あいにく江川先生は
 公用で留守にしておりまして・・」

「左様でござるか・・」

 阿部は残念な顔で黒田を見ていた。

「ああっ!代わりにいらしてる講師の先生は
 おりますが、呼んでまいりましょうか?」

 阿部は少し微笑みを浮かべ

「是非、お目通りをお願い致します!」

「では、こちらで少々お待ちくださいませ」

 黒田は廊下を足早に歩き、奥の部屋へ向かった。

 途中、教壇の座敷で机に向かい本を読んでいた
 弥助は何事かのような顔で、足早の黒田を見ていた。

 部屋の襖の前に黒田は立ち、大声で扉に向かい

「大鳥先生!岡本様と言う方の紹介で
 久保田藩士の阿部と申される方が江川先生のお目通りをと
 参っておられますが」

 だが部屋からは返事が返ってこなかった。






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