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1・黒田と弥助

1863年12月・江戸の町は雪こそ降ってはいないが
感じる寒さが肌に突き刺さる季節だった。

そんな江戸の路地を首巻きをして寒さに
堪えながら歩く一人の若者がいた。

薩摩(現在の鹿児島)から江戸の就学している
黒田了介である。

黒田は古びた建屋の門を潜り玄関の段に腰を
つかせ下駄を脱ぎ、並べたのち奥座敷に
向かった。

玄関には質素な看板に江川塾と書かれている。

部屋に入るなり
「おい、弥助どん、やっぱり薩摩とは違い江戸の
寒さはこたえるのぉ」

黒田は奥で机に向かい書物を読んでる若者に
声をかけた。

「当たり前じゃぁ、あほ!」

若者は黒田に向かい呆れた顔をした。

「世界地図を見ろ!江戸と薩摩では南北の尺が
これだけ違うんじゃ!」

親指と人差し指を地図にあて距離の違いを
示す若者。

彼の名は大山弥助

後に日露戦争で満州総指令として活躍する
大山巌である。

黒田は顎髭を手のこうでかきながら

「弥助どんは、相変わらず理屈で物事を
 考えるのぉ。
 まあ、それがお主の才能じゃぁっとん」

「おいのは理屈じゃなくて本当の事を
 直視してるだけじゃ」

弥助は黒田の眼を見つめながら

「だからお主も江戸に来たのだろ」

黒田も弥助の眼を見つめ

「おぉ!そうじゃ、もっと真実を、
 世界の現状を直視するためにのぉ!」

弥助も
「あぁ!そうじゃ、我らには学ぶべき事が
 山のようにあるんじゃ。
 そして、その山は必ず藩のために宝の山に
 しなくてはならんのじゃ」

黒田は弥助の両肩をもみ笑いながら

「相変わらずの生真面目じゃの、ぐははは!」

弥助は少々怒り気味に

「なんが、そんなにおかしかぁ!」

「いやあ、すまん、すまん」

黒田は少し言い過ぎた感じで謝った。


そんななか玄関から男の声が聞こえてきた。

「ごめんください、どなたかいらっしゃるべかぁ」

黒田が誰かと玄関におもむいた。




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